ファッションブランド【muuc:ムーク】が一緒にものづくりをしている工場や、その現場で働く職人さんを紹介します。少しでも多くの人に、私たちの製品の製造現場を見ていただきたいと思っています。
今回は、山形県東村山郡にある染色工場「石川染工株式会社」さんをご紹介します。私たち【muuc】が新しいステージのニット製品を作るために、たくさんの工場・職人に支えられています。
●山形の染色工場「石川染工株式会社」
「石川染工株式会社」さんは、「第8回ものづくり日本大賞」で賞を受賞した経験をもつような、日本の中でも高い染色技術をもっている工場さんです。
私たちも、初めてその技術に触れたときは、「何だ!?このニットは!!」ととても驚きました。私たちはニットの専門知識をもつファッションブランドとして長年やってきましたが、私たちも知らないような「風合いの出し方」を知っていたからです。
「石川染工株式会社」さんは名前の通り、糸や生地の「染め」の工場になりますが、その仕事内容は広く、ちょっとの「ひと手間」「ひと工夫」が必要となる染仕事を多くしているのが特長です。
そして、私たちが「石川染工株式会社」さんに共感しているもう1つの点が、伝統的な染色技術を応用した新しい技術を開発しようとする姿勢です。「本物の品質を知らないといけない」「本当にいいものを知ってもらうために仕事を続けている」と語ってくださったことがありました。
私たちのニットに対する思いと通じるところがありますし、自分たちがすでにもっている高い技術に寄りかかることなく成長を考えて取り組む姿に、ものづくりをする職人さんの偉大さを感じています。
ニット産地を陰で支える立役者と言えるような、染色工場さんです。
実際の工場の雰囲気をご覧になりたい方は、こちらの動画をご参照ください。
●「風合い出し加工」という重要な工程
工場で作られる製品の「ものづくり」は、分業によって行われます。例えばニット製品であれば「糸」→「染色」→「製造」→「風合い出し加工」と、1つの製品をいくつかの工程に分けて作っています。作り手ももちろん、次々と変わります。
「石川染工株式会社」の社長さんとお話をしていたとき、「各パートがチームになって、次の人にいかに良いバトンをわたせるか大事です。」とおっしゃっていたことが、とても印象に残っています。
染色を得意とする「石川染工株式会社」さんですが、実は「風合い出し加工」についても、非常に高い技術をもっている工場さんです。
一般の方にはあまり知られていないことだと思いますが、ニット製品の良し悪しを決めるものは、素材や編み方、デザインだけではありません。最後の「風合い出し加工」が非常に重要で、これによって製品の良し悪しが大きく左右されてしまいます。
「風合い出し加工」の中には、いくつかの工程があります。大まかに言うと、編み上がったニット製品に「洗い」→「乾燥」→「蒸気(アイロン)」を施して、製品の最終的な仕上げを行うことです。この「風合い出し加工」の施し方によって、製品の表情はまったく違ったものになってしまいます。ニット製品にとって、大変重要な工程になります。「石川染工株式会社」では、「洗い」→「乾燥」を行っていただいています。
●「ウルグアイウール」の良さを最大限に引き出す
今回、私たちのブランドでは、「石川染工株式会社」さんに「ウルグアイウール」という素材のニット製品の「風合い出し加工」をお願いしています。素材の良さを最大限に引き出すために、何度も試行錯誤した結果生まれた、特別な加工をしていただいています。
写真からも、そのスポンジッシュな質感が伝わるかもしれません。普通「ニット」と言われて思い浮かべる製品に比べると、編み目が詰まったような印象に見えるかもしれません。加工で目を詰まらせることにより、非常に暖かいのに、柔らかく、とても肌触りがいいニットが完成しました。
実は、あまりにも高い技術で、この工場でなければ作ることができない特別なものなので、その技術自体に非常に価値があり、詳細をここでご紹介することができません。
今回の私たちのウルグアイウールのニット製品は、ベージュ・グレー・ブラックの3色展開なのですが、色によって加工の調整の仕方をすべて変えているというほどの手間をかけて作られています。同じくものづくりをしている者として、本当に頭が下がります。
ちなみに、今回の「ウルグアイウール」のニットは、製造を別の工場で行なっています。改めてそちらの工場さんについてもこの連載でご紹介させていただく予定です。製造現場の様子をご覧になりたい方は、こちらの動画をご参照ください。
●工場さんにも声が届くように
洋服は、どんなにいい素材、いい織や編み、いい縫製ができたとしても、最後の仕上げですべてが決まります。仕上げの工程を担ってくれる職人さんは、私たちブランドにとってかけがえのない存在です。
しかし、今回この記事でご紹介させていただいた、ニット製品の最後の仕上げの工程「風合い出し加工」について、一般の方はどれくらいご存知だったでしょうか?
高い技術をもった職人さんが、しっかりと研究して手間暇をかけてくれているからこそ、特別なニット加工ができます。そして職人さんたちは、最後の出来上がりの部分とお客様に届ける部分を、私たちブランドに託してくれているのです。
このような上質な製品を作ると、私たちブランドはお客様や販売店の方から、直接「すばらしいです!」「気に入りました!」というお声をいただくことができます。しかし、その製品の良さを実現するために最大限の貢献をしてくれた工場の職人さんたちは、こんな声を直接聞くことはありません。
私たちはできる限りそのような声を、実際に現場で手を動かして「ものづくり」をしている職人さんたちに届けたいと思っています。
そんな思いから今回、一般的にはあまり知られていないニット製品の「風合い出し加工」のすばらしい技術を私たちのブランドに提供してくれている「石川染工株式会社」さんをご紹介させていただきました。職人さんたちの高い技術によって生まれた製品の良さを、たくさんの方にお届けしたいと思っています。