日常の中に溶け込みながらも「ちょっと特別な」装いを演出する【muuc】のお洋服を、写真と文章でご紹介します。さまざまな場所でさまざまな暮らしを営む方たちに【muuc】のお洋服を実際に着ていただき、写真家の割田光彦さんに、何気ない生活のシーンから「日常と非日常の間」の空気を切りとっていただきました。

 

 

穴があいてしまった衣類などを、当て布や刺繍によって修繕する「ダーニング」に魅せられ、割田貴子さんは現在「つくろい」の活動をしています。

まだまだ知らない人も多いと思いますが「ダーニング」という言葉が少しずつ浸透してきて、イベントなどにお声がけをいただいたり、昨年までは定期的にワークショップも開催していました。

ダーニングは短い時間でも達成感があり、忙しい日々の中でもできるところがいいそうです。偶然見つけてやってみたら面白くて夢中になってしまったという割田さんですが、現在のように「つくろい」の仕事で活躍の場が広がるとは、当初は思いもしなかったそうです。

つくろいは楽しかったんですけど、人に見せるようなものではないと思っていました。自分の穴のあいたものを直して「かわいくできたな」と喜んでいたようなものでしたから。それを人に「いいね」と言ってもらえるとは思っていなかったんです。作品を置かせてもらったりワークショップをやらせてもらったり、声をたくさんいただくようになって「少し力を入れてやってみようかな」と思うようになりました。

 

 

神奈川から山梨に移住したのが6年前。割田さんは以前から「田舎に住みたい」という気持ちをもっていたそうです。

田舎でのんびり暮らしたいと思っていました。今は自分の理想としていたのんびり感に近い暮らしができていると思います。歩いて行ける場所にお店はありませんし、夜は真っ暗で歩けば動物の鳴き声がするようなところです。ご近所さんは5、6軒、みんなおじいちゃんおばあちゃんです。

割田さんは今、活動の範囲を静岡まで広げる準備をしているそうです。でも今後、いろいろな場所を転々としたいと思っているわけではないとも言います。

何もなければ山梨で過ごすと思いますが、もし静岡が楽しければ静岡がメインになってもいいと思っています。転々としたいとも動きたくないとも思っていないので、どちらでもいいと思っています。そのときの状況でいい方向を選んでいきたいという感じです。

 

 

のんびりとした田舎での暮らしは、不便さがありつつも都会とは違う時間が流れているように感じます。

忙しさの波に乗って生活することは、ある意味「楽」だとも思うんです。でも、ときどき「自分って何なんだろう」と思ってしまったりもする……今のこの環境では、自分の気持ちで動けるし自分で考えたことができるので、私には合っていると思います。

割田さんの1日はヨガでスタートします。山梨の朝はとても冷え込むそうですが、朝起きて最初にヨガをすると気持ちが整うような感じがすると、割田さんは言います。

朝起きてから娘を起こすまでの時間が、1日のうちで自分のためにとれる時間かなと思っていて、体操程度に軽くヨガをすることもその時間を使ってやっています。本当はもう少し早く起きてその時間を延ばして、縫いものなどもしたいと思っているのですが、寒くなってくるとなかなか起きられなくて……。

 

 

もともと大きいものを作るよりも、刺繍や縫い物など「小さい範囲に表現できるもの」が好きで、細かい部分の繊細なデザインや表現に目を奪われることが多いそうです。

「ダーニング」は、大したことじゃないのですが糸の選び方や、同じことをやっても針目の違いで表情がまったく変わったりします。やっぱり、小さい範囲でさまざまな表現ができるところが私は好きで、すごく楽しいです。

のんびりとした田舎暮らしの中で、日常の1つ1つのことにとても丁寧に向き合っている印象の割田さん。最後に、そんな日常の中にある、ちょっと特別な「非日常」について伺ってみました。

なんでしょう……特にない気がします。毎日が同じではないので。もし、毎日同じ暮らし方をしていて、仕事に行って帰ってきて家事をして寝て……という生活をしていれば、休みの日が特別になると思いますが、私の今の暮らしでは、同じ日というのはありません。縫い物をする日もあれば、工具を使って改装工事のようなこともしますし、人と会うこともあります。特別な日というのはなく、毎日が違っていると思います。

まだまだ自分の表現を確立できずに「どう表現するか?」を考え中だという割田さん。ただ、表現する方法は「縫うこと」だと思っているそうです。今後「人に見せたいと思えるものを作りたい」と、最後におっしゃっていました。

 

 

割田貴子
1985年生まれ。神奈川県出身。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。幼少期より手を動かして作るものに興味をもつ。2017年より夫婦で【つづり舎】としての活動を始め、つくろいを中心とした日常にある手仕事、今あるものを大切にしながら出来るものづくりに主眼をおいている。
・つづり舎:https://www.tsudurisha.com
・TOWA OLD FOLK HOUSE:https://www.oyado-towa.com

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