こんにちは。「AND MAGAZINE.JP:アンドマガジン」の発起人でファッションデザイナーの村松啓市です。いつもこのマガジンをご覧いただいている皆様、ありがとうございます。
実は今回、新しいプロジェクト「いろんな手」を、繊維・アパレル産業の新規事業開発や市場創出の支援を行っている【装いの庭】さんと立ち上げることになりました。
今後、イベントやワークショップ、販売会、コラボレーションによる商品開発など、さまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています。
本日はまず、「いろんな手」が生まれた理由や、これからどんなプロジェクトに育てていきたいかなどをご紹介したいと思います。【装いの庭】代表の藤枝大裕さんにもお話を伺っていますので、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
●プロジェクト「いろんな手」とは?
プロジェクト「いろんな手」では、手仕事によるものづくりをしている作家さんや職人さんたちと一緒に、人の手から生まれるものの「あたたかさ」や「やさしさ」などを伝える活動をしていきたいと考えています。
僕はもともと、たった一本の糸でも人の手によって、繊細で力強く美しい表現ができることに魅了されて、ファッションの道を選びました。
そのときの感動と、ものづくりのすばらしい世界を、広めていければと思っています。
そのような僕の気持ちに賛同してくださって、協力を申し出てくれたのが、【装いの庭】代表の藤枝大裕さんでした。
【藤枝さん】
僕は、ものづくりには大きく3つのステージがあると思っていて、ホビー的な手芸、工芸的なクラフト、そして、芸術的なアートやファッションです。
なんとなく分けられて紹介されがちですが、「人の手が作り出す美しいもの」という意味では、3つは同じところにあると感じています。
「いろんな手」の取り組みでは、作家さんにもお客さんにも、ジャンルをまたいで参加してもらうことで、新鮮な出会いを届けられたらと思っています。
【装いの庭】ではもともと、作家さんや職人さんなどのサポートを行ったり、作家さんを集めたイベントを開催したりしています。
村松さんから「いろいろな作家さんと交流したい」という話を聞いて、自分たちにできることがあるのではないかと思いました。
立ち上げのタイミングが今だったことには、昨年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響もあります。僕のブランドはもちろんですが、今、繊維・アパレル産業は非常に厳しい状況になっています。
同業の方から、今の状況をどうやって乗り切ればいいのかという相談を受けることも増えました。僕も、自分たちにできることはないかと考えていました。
藤枝さんは、お客様と作家さんとのことを考えながら、余計な負担がかからないようにプロデュースのできる方です。【装いの庭】の理念や世界観もすばらしいのですが、それ以上に作家さんや職人さん、工場や業者さんたちと一緒に汗をかける人だと思っています。
藤枝さんの力を借りてプロジェクトを立ち上げられたことは、本当に心強いです。
【藤枝さん】
村松さんは、思いついたアイデアをすぐに実行に移せる行動力のある方で、その土台になっているのは、長年続けてきたブランド力だと思います。
そこは、僕には到底及ばないところですから、協力するというより、大いに胸をお借りするつもりです。
自分ひとりでなんでもやろうとするのではなく、僕のような人間にも機会をくれて、人を巻き込みながら相乗効果で物事を考えるところが本当に尊敬できます。
●「いろんな手」誕生の背景で
僕は文化服装学院の「ニットデザイン科」というところを出ていますが、実は藤枝さんもこの科の卒業生です。そして、同じ時期に在学していました。
文化服装学院の「ニットデザイン科」は人数も少なく、特に男子生徒は学年に数人しかいませんでしたから、当時、すれ違って挨拶したことはあったかもしれませんが、学生時代は知り合いではありませんでした。
【藤枝さん】
実は、僕は村松さんのことを学生時代から知っていました(笑)僕が進級した年が、ちょうど【everlasting sprout:エヴァーラスティングスプラウト(※村松さんのファッションブランドで2019年にmuucに改名)】のデビューの年でした。
デビューコレクションを学校の施設内で発表するからというので、先生の勧めで見に行ったのが最初のきっかけです。
その後も、雑誌やニュースで度々目にしましたし、「ニットデザイン科卒の成功しているデザイナーの代名詞」というイメージを、村松さんにはずっともっていました。
数年前、愛知県で行われた糸の展示会で、藤枝さんが突然声をかけてくださってお話しさせていただいたことが、僕にとっては最初のきっかけになりました。
狭い業界なので、その後も展示会やイベントなどがあると、顔を合わせる機会は多かったです。もともと、僕も藤枝さんも同じような思いでこの業界に関わっていましたから、次第に「何か一緒にできることはないかな?」と考えるようになりました。
【藤枝さん】
昨年の夏、静岡県島田市にある村松さんのアトリエ兼ショップを、アポも取らずに突然訪ねたことがありました。
村松さんのお店の噂は別の友人からも聞いていたので、一度行ってみたいと思っていました。そのとき、村松さんがお店にいらっしゃって、ゆっくり話をすることができました。
お店の周りには本当に何もなくて(笑)「どうやって訴求してお店にお客さんを集めているのだろう」とか、「どうやったらこのようなブランドを回していけるのだろう」とか、仕事柄そういうことばかり考えていました。
ブランドのコンセプトもすばらしいし、生み出している製品もすばらしい。いろいろとご苦労もあるそうですが、今以上に成功していってほしいと思いました。
「手仕事」から生まれるものづくりのすばらしさは、一朝一夕には伝わらないところがあります。僕もこれまで活動を続けてくる中で、少しずつ広がっていくものだと実感しています。
今回のプロジェクトを立ち上げるのは、作家さんや職人さん一人ひとりがそれをバラバラにやるのではなく、「つながって協力すること」で、より多種多様な世界を多くの人に知ってもらうことができると思ったからでした。
●まずは共同企画のイベント開催からスタート
先日、このマガジンでもご案内しましたが、今月末にこのプロジェクトの共同企画第1弾として、作家さんたちと直接交流できるイベントを開催することになりました。
作品の展示・販売他、ワークショップも開催します。そして、遠方でご来場いただけない方には、オンラインでの販売会で作家さんたちの作品をご購入いただけるようにします。
【藤枝さん】
プロジェクト「いろんな手」を通して、ホビー的な手芸、工芸的なクラフト、そして、芸術的なアートやファッションの3つのジャンルがよい具合に混ざり合って、僕たちの周りにいる作り手たちの居場所になっていったらいいなと思っています。
ですから、今回の第1回目のイベントは、お客さんたちだけではなく、参加してくれる作家の皆さんにとっても、いい交流の機会、新しい発見の場にできるようにしたいです。
手仕事でものづくりをすること、そのすばらしさを伝えること、その1つ1つはとても地道な作業で、大変な時間と手間がかかり、少しずつしか広がっていかないと、これまで活動してきて感じています。
だからこそ、少しずつでも「手を動かすこと」が大切だと感じていますし、まずはとにかく「知ってもらうこと」だと思っています。この「AND MAGAZINE .JP」を立ち上げて、このような紹介記事をコツコツと作っているのもそのためです。
1回目のイベントを通して、1人でも僕らの活動を知ってくれて、ものづくりの現場に触れてもらえたら、とてもうれしく思います。
▶︎【AND WOOL】×【装いの庭】共同企画「いろんな手」イベント詳細
http://andmagazine.jp/2021/02/13/20210213/