ファッションブランド【muuc】では、「シルクとモヘア」や「アルパカとモヘア」のニットアイテムをお作りしています。
しかし、店頭にて直接お客様とお話ししていますと「モヘア」を着慣れていない方のモヘア素材に対する誤解を感じることがあります。
例えば、「モヘアはチクチクしそう」「毛玉ができやすそう」「すぐ壊れてしまいそう」といった声が、少なからず聞こえてくるのです
実際には非常に機能性の高い優れた素材ですので、今回はモヘアの魅力についてご紹介させていただきます。
【機能性が高いモヘアのはなし】
そもそも「モヘア(MOHAIR)」とは、「アンゴラ山羊(ANGORA GOAT)」から採取した毛のことを言います。原産地はトルコで、トルコ・アメリカ・南アフリカが「三大原産国」と言われています。現在は、アメリカテキサス州の西部が最大産地になっています。
「ウール」は羊から採れた毛をことを指しますが、モヘアはウールに比べ、毛のクリンプ(毛の縮れ)が少なくキューティクルが小さく滑らかで揃っているため、光沢があり毛足が長いのが特長です。さらに、モヘアの繊維が含む空気の量はウールよりも多いため、保温力に優れ、高い吸湿性をもっています。汗で蒸れにくく、快適に過ごせる機能性の高い繊維です。繊維の表面が平滑で、肌触りも非常にいいです。
【muuc】が使用しているモヘアは、中でも特に繊維が細い上質なものです。やわらかさや光沢感が、より一層強く感じられると思います。
【贅沢なシルクの芯糸のはなし】
【muuc】で使用している「シルクモヘア」の糸は、芯糸にシルクを使うという、非常に贅沢なものです。例えば、芯糸にナイロン素材を使用している糸に比べると、光沢感も手触り・肌触りも、しなやかさも格段に違ったすばらしい仕上がりになります。一般的にモヘアの芯糸にはナイロン素材が使用されることが多いですが、縮みやすく、徐々にゴワゴワしてくるというデメリットがあります。
【モヘアの毛玉のはなし】
私もブランドのスタッフも日常的にモヘアニットをよく着ていますが、「毛玉になりやすい」といった感覚はありません。【muuc】のシルクモヘアは繊維が細いため、毛玉ができても大きなものにはならず目立たないので、着込んだ服の「良さ」として楽しめます。年を重ねるごとにそれぞれ違った風合いや表情が出てくるので、着てくださる方にも「ニットを育てる」ような感覚で楽しんもらえるのではないかと思っています。
参考までに、私物のニットの表面の写真を載せておきます。
▼これは個人的に毎日のように着ている 「アルパカとモヘア」 セーターですが、一般的な製品だと毛玉ができやすい脇や袖下にも大きな毛玉が見られません。
▼こちらの 「シルクモヘア」 ニットスカートは8年くらい前のもので現在も着用されているものですが、一番摩擦があるお尻の部分も毛玉がまったくありません。
私自身、今シーズンもこのセーターをよく着ていますが、非常にあたたかくて寒い冬を快適に過ごすために手放せないアイテムになっています。私の住んでいる静岡は比較的暖かい地域なのですが、その分、アトリエや店舗や住居の暖房設備が弱いというところがあります。シルクモヘアのセーターにインナーダウンを着て、寒い日もとてもあたたかく過ごせています。実際に着てみることでわかる「心地良さ」がある素材だと思います。
デザインのはなし
2022.01.27.
ファッションデザイナー
村松啓市